名刺を作った

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名刺を作った。会社の仕事とそれほど関係のない活動が多かったのに今まで個人用の名刺を持っていなかったのは、コアになるテーマがなかったからだ。今は違う。

目の前にある作品はたった一つしかないけれど、出版人、編集者、そして著者「藤井 太洋」という明確なロールを持つことにしたからだ。

昨年の秋頃から、余暇と通勤時間を使って、iPhoneで書き始めた小説は、文庫本の組版にしておよそ200ページを超える長編小説になった。生まれて初めて書いた物語がこんなに大きなまとまりになったことに、正直、驚いている。

昨年の大震災と、それに続く福島第一原子力発電所の事故は私にも大きな衝撃を与えた。それにも増して重くのしかかってきたのが、事故と放射能に関する発言への抵抗感だった。俗曲学者が不安を煽り、メディアが同調する。時には外国からも極めて薄弱な根拠で恐怖を煽るレターが不安を煽り、1ベクレルでも危険であるかのような空気に、私は耐えられなくなった。

あの事故を経て、この重苦しい空気の中で、日本語で、または日本人としてなにかを発信する時に、私にはあの事故を看過すことはできない。

そんな気持ちで書き下ろしたのが「Gene Mapper」だ。未来と、科学と、人間の物語。

本作には原子力発電の話は微塵も登場しない。意図的に書かなかったわけではないのだけど、今の私には、不安を抱えて暮らす心に正面から立ち向かう力が足りていないのかもしれない。

でも、私は自分のロールを決めた。物語という枠でやれることをやる。正面からこの空気に立ち向かえる力が持てる日を手繰り寄せるために、物語を書く。

PS:
朝になって、名刺のスペルミスを指摘された。スペルチェッカーがライブで動かないIllustratorが悪……じゃなくて、組版をもっとつめて再作成します。お恥ずかしい。

まさかKoboが来るとは

Gene Mapper」も本日の昼、ようやく最終稿の推敲すいこうが終わり、ここから電子書籍出版のための作業が始まる。推敲を原稿に反映させ、ルビや縦中横などをマークアップし、EPUBのスタイルシートを組み上げていく。Amazon もまだ来ないし、 Google Play Books も、Apple の iBooks Store もまだっぽいので、いくつかのインディーズなチャネルと直販から始めようか。プラットフォーム対策は後からだ……なんてことを考えていたら、驚くべきニュースが飛び込んできた。

日本にとっての電子書籍の黒船は楽天だったのか!むささびの視線 より)

楽天の Kobo を忘れていた!アプリの存在は知っていたけれどプラットフォームとしてはようやく Kobo writing Life が始まるかどうかといったところで完全にシカトしていたけれど、ハードウェアの電子書籍ビューワーを出すとなると注目しないわけにはいかない。

まず、アプリから。日本語縦組……信じられない。いけている。それもかなり。ルビの位置が若干ずれるけれど充分許せる範囲内だし、 Kinoppy と違って文中リンクも動作する。なにより縦横を織り交ぜたレイアウトがきちんと動くことには感動した。動作速度が物足りないのが残念ではあるが、これなら推奨ビューワーとして Kinoppy と並べられる。欧文の縦書きを実現するために用いたかった text-orientation: upright がマトモに動作するEPUBビューワーはとても少ないが、Kobo Appは対応している(そのかわり縦中横で使いたい text-combine が使えない。まぁいい。こちらの逃げ道はある)。


Kobo の縦組みサンプル

iPhone版は読書に充分な速度で動作する。iPad版はすこしもったり感じてしまうかな。しかしソーシャルリーディングは魅力的だ。AmazonやGoogle、Appleの電子書籍プラットフォームがここまで出遅れてしまうと、プラットフォーム・フリーな書籍の流通量も相当なものになるだろう。

しかし楽天が三強に先んじるとは本当に思っていなかった。楽しみがまた増えた。