DNAシーケンス

Gene MapperではDNAコードを人工的に編集して作り出された蒸留作物や設計作物が登場する。膨大な塩基配列をデジタルデータとして扱えるほど正確に記録、編集できることが前提でなければならないので、拡張現実や人体通信、量子コンピューターなどよりももう十数年ほど先にあると思い込んでいたのだけれど、あるニュースが教えてくれたデバイスがこのアイディアにフレッシュな肉付きを与えてくれた。

Run Until – DNA sequencing informatics on the GridION and MinION systems from Oxford Nanopore on Vimeo.

Nanopore DNA sequencing from Oxford Nanopore on Vimeo.

Nanopore DNA Sequencing というものだ。USBのバスパワーで動くデバイスは塩基を「デジタル」に読み取ることができる。現在主流のポリメラーゼ連鎖反応PCR法をベースにしたDNAシーケンシングとは全く原理が異なり、センサー部のナノマシンに取り付けられた転写酵素でDNAをほどき、センサーに通る塩基を一つづつ「読んで」いく手法だ。

USBバスパワーで動作するこのデバイスは、人間のDNAに相当する30億塩基対を15分で読めるとしている。ヒトゲノムプロジェクトに費やされた期間を考えると、エニアックがiPadになった程の技術革新と言えるだろう。しかも、このデバイス、なんと$1,000程度で売り出すらしい。現在、ヒトゲノムのシーケンシングには1,000万円、そして2週間の期間が必要だという。2週間というのも凄い話だが、弁護士事務所を訪れてその場で親子判定や致死遺伝子の発現による結婚の可否を判定できるような手軽さはない。

ハンディで確実なDNAシーケンスは様々な問題を生み出すだろう。遺伝子工学は今の数百倍の速度で新たな製品を生み出すようになるだろうし、犯罪捜査はともかく、致死遺伝病を持つ個人を一瞬で特定できてしまうことが新たなレイシズムを生み出すことは確実だ。そして、農園や牧場、様々な運動をしている団体は商品や自分の栽培種をスキャンして保存するようになるだろう。分析に必要なコンピューターはパターンマッチングと並列処理に特化したプロセッサー──個人的には量子コンピューターを予想したいところなのだけど──などへ波及するのではないだろうか。

デジタルなDNAシーケンスは、世界のありようを変える。Gene Mapperでは多くの未来技術を空想しているが、DNAがデジタルデータのように扱われることは間違いなく実現するであろう技術の一つだ。

コンタクトレンズへの映像投影

「Gene Mapper」世界ではメガネ、コンタクトレンズ、そして角膜へコンピューターで生成した映像を投影して、現実と区別できないほどの拡張現実を描写しているが、これはもう数年もすると、それに近い体験ができるようになるかもしれない。

BBCの伝えるところによると、国防高等研究計画局DARPAは、INNOVEGA社が開発している複焦点コンタクトレンズ「iOptik」のプロトタイプを供給するような契約を結んだということだ。

Dual-focus contact lens prototypes ordered by Pentagon

iOptikはGene Mapper世界で林田が使っているコンタクトレンズ・スクリーンとは異なり(当たり前だ)、ヘッドアップディスプレイHUDの映像と背景の世界、両方に焦点を合わせられる、光学的な遠近両用コンタクトレンズだ。行動中の情報表示を読むのにHUDが投影している仮想スクリーンへ焦点を動すことなく情報を読み取ることができるのはありがたいことだろう。

おなじみのGoogleも「Project Google Glass」の成果を2014年ごろには出したいとのこと。「メガネ」で、いいですか?という世界が本当にすぐそこまで来ていることを実感する。Google Glassのような方式では重ねて描かれるコンピューターからの出力と外界が別の焦点面に描かれてしまうが、iOptikのような複焦点レンズがそれを解消するわけだ。

今の技術ではコンタクトレンズのような小さな軽いデバイスに大容量のデータ転送を行う方法が確立していないが、人体通信HMCでの大容量転送ができるようになり、より小さな電力で動作できる素子が出てくれば「コンテンツ」が揃った状態から、いきなり普及していくのではないだろうか。